損失という「落とし穴」を避ける。損失回避の原則。

損失を回避するには、損失をもたらす落とし穴の存在を知ること

 

素晴らしい投資成績を求めて努力するよりも、損失を回避する、「落とし穴を避ける」ことが重要です。気づかないうちに大きな落とし穴に落ちると、一度の失敗で大きな損失を出し、市場から退場することになるからです。

では、損失をもたらす「落とし穴」にはどんなものがあるのかまとめてみます。

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落とし穴1 想像力の欠如

投資とは、「未来に対処すること」である。

未来を予測するには、過去に起きたことに非常によく似た状況になると仮定する以外には、選択肢は殆どない。

これら投資の前提に対して、想像力の欠如とは何を指すのでしょうか。

①将来起こりうる、極端な事例を予期しそこなう

普通の出来事が必ず起きるわけではなく、想定外のことが起きることも考慮しておかねばならない。

起きるはず!のことを当てにしすぎ、過度に期待してはいけません。普通ならばこの様になる、過去もこうだった。普通に起きることに期待しすぎ、他の可能性を無視して悪い結果が起きたときに、命取りになる水準までリスクとレバレッジを高めてはいけません。限りなく低いの確率の事が1回起きただけで、大きなダメージを受け、破滅することになるからです。

しかし、全ての結果に備えすぎて、リターンを減らしすぎてもいけません。有り得そうな厄災、ハイパーインフレやデフレなどすべての事に保険を掛け、時間と資本を費やすことはあまりにコストがかかります。保険を掛けすぎると何も起こらなかった時に、リターンが大きく目減りします。例えば安全資産を重視しすぎて、ポートフォリオがゴールドと国債とキャッシュだけにすることはやりすぎかも知れません。落とし穴を避けるのは必要だが限度があります。この限度は投資家によって違います。若い人なら株式などリスク資産の割合を増やしてもいいでしょう。時間があるので取り返せるチャンスはあります。しかし現役世代でない年配の方であれば、稼ぐチャンスは少なくなるので、安全資産の割合を、自ずと増やすべきかも知れません。何処までリスクを許容することができるのか?その人に合った保険を掛けることが必要なのです。




②極端な事象での波及効果を理解しそこなう

想像力の欠如には、もう一つあります。

資産の相関性の理解することです。

例えば、あるメーカの株が下落すれば、そこに関連する銘柄が下落することはわかる。

しかし、米国株が全部、先進国の株全て、新興国の株、全世界の株、全ての株式と債券が同時に下落する場合があることを、理解している人はあまりいないのではないでしょうか。金融危機による世界同時株安などがそうです。

極端に資産が偏っていると、危機時に深刻なダメージを受けることになります。特に高レバレッジ商品を一つの資産に固めると、全てを失う事になりかねません。

株式・キャッシュ・ゴールド・国債など、ポートフォリオに異なった動きをする資産をバランス良く入れておくことが重要なのです。

2007年から2008年に金融危機がおきました。有名なリーマン・ショックです。当時、サブプライム住宅ローンのデフォルトを懸念したものはいたでしょうが、住宅ローン市場以外のはるか広い領域へその打撃が及ぶことまでは誰も見込んではいませんでした。そしてリーマン・ブラザーズは存続できなくなり、GMとクライスラーが倒産法の適用を申請しすることを予想できた人は、誰もいなかったと思います。




落とし穴2 心理的要因の悪影響

心理的な要因は、投資の過ちを引き起こします。

心理的要因は、株価に大きな影響を与えます。一部の投資家の見方が極端に偏り、他の投資家の見方と釣り合いが取れなくなると、価格は過度に高くなったり、低くなったりすることがあります。これがバブルや暴落が発生する要因となるのです。

①強欲

強欲が行き過ぎると、株価は過度に高くなり、リターンが低下してリスクが高くなります。そのような株を買うといずれ損失を出します。本質的価値を上回る高すぎる価格で買うことは、すでに割高な資産がさらに過大評価されるという幸運に恵まれなければなりません。

②今回は違うという思い込み

投資家は、新手の理屈を進んで受け入れる。強気相場では、懐疑心が低下して、不十分な理屈を受け入れやすくなります。例として、

・新しい技術や事業プロセスが世界を変える。

・従来のルールが当てはまらない。

・ルールが変わった。

・従来の尺度(PER、債権のイールド・スプレットなど)がもう通用しない

投資家が過信して、懐疑的になることを怠ると、これらの過ちは起きやすくなる。そのような時は、投資家の熱狂を後押しする理屈が存在します。

このような新しい理屈を語るものは

①新しい現象は過去との決別を意味する。

②その現象に乗るには、物事が正しい方向に進む必要がある。

③その現象以外に起きるう現象がたくさん考えられる。

④新しい現象の多くは、悲惨な結果をもたらす可能性がある。

これらを失念しているのです。

過去の経験では、これらの落とし穴を避けるためには役に立ちません。重要なのは、落とし穴を予測しようとする意識することなのです。




落とし穴3 強気相場での振る舞い

強気相場の先には落とし穴が待ち受けていることを感じ、ディフェンシブな動きをすれば損失を抑えることができる。

お気楽で無謀な投資家の振る舞いに気づく。

下落に対する心構えをする。

資産(特にリスクの高いもの)を売却する。

レバレッジを引き下げる。

キャッシュ比率を高める。

ポートフォリオ全体でディフェンシブ傾向にする。

このうちどれを実践しても、落とし穴を避ける効果はあります。リーマンショックなどの金融危機時には良い投資成績を収めた人は殆どいませんが、周りよりも損失を抑え、痛みを減らすことはできたはずです。

 

落とし穴4.危機時はサイクルに反した行動を取る。

危機時には、特に大きな落とし穴が用意されています。

下げ相場に屈服して損失を出し、殻に閉じこもり、チャンスを逃す

危機時の価格下落は、投資家心理に最大級の衝撃を与えます。マージンコールと担保資産の差し押さえが起き、レバレッジ商品の崩壊を招きます。そして自信と決断力を失くした投資家は、相場の谷底で過ちを犯しがちになります。底値で売って、損失を確定してしまい、その後の相場回復の波に乗る機会を自ら潰す可能性があります。

2007年から2008年にかけて起こった金融危機で、その影響をまともに受けずに住んだ者は、みなサイクルに反した行動をとっていました。サイクルに沿った行動は、最大の落とし穴だと考えられます。

このような危機が起きた時にディフェンシブな投資家は損失を減らすことが出来、他の投資家よりも冷静でいられることで、後にくる上昇相場で最大限の利益を上げることが出来ます。下げ相場を生き抜き、その結果到達した谷底で買うことは、すぐれた成功をもたらします。そのためにはまず、「落とし穴を避けること」が必要なのです。




落とし穴5 賢く行動しようというこだわり

 

作為の過ち(例えば買うこと)不作為の過ち(例えば買い損なうこと。)はあるが、やったほうが賢明ということが特にない時は、賢く行動しようとするこだわりこそが、落とし穴になることがある。

行動する必要のない時は、じっとしていることを覚えていることも大事です。

 

まとめ

投資には落とし穴がたくさんあります。今回は代表的な5つの落とし穴をご紹介しました。落とし穴を避けるには、落とし穴について常に目を光らせ、「落とし穴を予測しよう」という心構えが必要です。気づかないうちに思わぬところで落とし穴に落ち、致命傷を受けないように心がけましょう。

最終的に間違いが行き着くところは資産の「本質的価値から離れた価格」です。しかしそれに気付きしかるべき行動をとることは容易ではないのです。

本質的価値については過去記事にまとめましたので、参考にして下さい。

バリュー投資の方がグロース投資よりリスクが小さい。資産の本質的価値を把握すること。

 

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