株価を高めてきた企業の経営者たちは、何にフォーカスしているのか?
米国市場では4半期ごとの収益を発表し、そのたびに投資家は一喜一憂したり、株価は大きく変動したりする。
しかしこのようなしくみは企業にとって意味のあるものなのか。基本的には短期的に結果を出せる企業などほとんどありません。したがって投資の基本である、長期投資にフォーカスする企業に投資すべきであって、4半期決算は無視すべき理由をまとめます。
90日ダービーをクリアするために経営者とその会社は疲弊する。
四半期決算を“90日ダービー”と称することがあります。この期間に、経営者は短期的な収益を発表することが求められ、その結果は彼らの報酬に直接影響を及ぼします。しかし、報酬に反映されるのは過去の努力の成果であり、実際には90日間の活動のみによるものではありません。さらに、これらの成果は企業の努力だけでなく、経済状況に大きく依存しています。
この“ダービー”に巻き込まれた経営者は、短期的な利益増加を目指す戦略を立て、目標を設定し、コスト削減などを通じて直近の収益向上を追求します。その結果として、経理の財務報告に集中し、本来注力すべき長期戦略に費やすべき時間を浪費してしまうことがあります。
このような環境に取り込まれた企業は、短期的な視点に固執し、長期的な取り組みがおろそかにされるリスクがあります。
成長し続けてきた企業の経営者が重要視すること
では、本来企業価値を高めるためには何をすべきでしょうか。
成功した経営者の考え方を例に挙げます。
アマゾン ジェフ・ベゾス
アマゾンは配当を出しません。にもかかわらず、株価が上昇しているのは将来への期待が高いことを意味しています。この株価は将来への長期的な視点、戦略が実を結ぶであろう結果を予想されての事であると思います。決してアマゾンは、短期的な利益を追求するために、投資計画を変更することはないのです。
1997年、株主に充てた手紙での、ジェフ・ベゾスの有名な言葉
「もし決算報告の見栄えを良くするか、将来のキャッシュフローの現在価値を最大化するかの二者択一を迫られたら、キャッシュフローを選ぶ。」
2009年金融危機の時の手紙
「この混乱するグローバル経済の中でも我々の基本的なアプローチは変わらない。引き続き長期の事に集中し、顧客の事を常に考えながら、真摯に取り組んでいく。」
彼は短期決算には興味がなく、常に長期的な思考をしていることになります。
その結果はどうなったのか。現在の成功は火を見るよりも明らかです。
バークシャーハサウェイ ウォーレン・バフェット
皆さんご存じの世界一の投資家、バフェットさんも長期投資で知られています。
彼は売るつもりで買う事はありません。その企業を買うつもりで株を買っています。投資家たるものは長期投資で分散したポートフォリオを組むことを、常に説いています。
「四半期業績が落ち込んでも問題ではなくなる。投資期間トータルで見て購買力を大幅に高める事だけに集中しなさい。」
アップル スティーブ・ジョブズに学ぶ
どん底のアップルを死の淵から蘇らせた、スティーブ・ジョブズは名経営者の一人です。
彼はアップルの株価を気にしていなかったことは有名です。
ジョブズがやらなかったことから、学べることがあります。
①つねに業績指標にフォーカスしていなかった。
②インセンティブ(ボーナス)で業績を改善しようとしなかった。
③社員が参加して一枚岩になることをせず、ほとんどトップダウンで行った。
④ミッション、ビジョン、目標、戦略が決まっていて、頭を悩ませることは無かった。
⑤90日ダービーに巻き込まれなかった。
ジョブズはむやみに技術の限界を超えることはせず、誰もが素晴らしいと思うデザインを追求していました。製品とサービス全体がその時点で臨みうる最高水準にすることが、デザインであるという信念で動いてたのです。
まとめ
上記から導き出される結論は、企業の価値を長期にわたって高める経営者は、四半期ごとの短期的な利益や決算報告の数字にとらわれず、より長期的な視点で戦略を立て、行動することに重点を置いています。
長期的視点の維持
成功した経営者たちは、短期的な収益よりも長期的な成長とキャッシュフローの最大化を優先します。
顧客との関係
経営の焦点を顧客満足度と製品の質に置き、これによって長期的な企業価値を構築します。
短期的な業績指標の避け方
90日ダービーに巻き込まれることなく、短期的な業績指標に振り回されることなく、組織のビジョンとミッションに沿って行動します。
質の追求
技術やデザインの限界に挑戦し、業界の標準を引き上げることにより、市場での地位を確立します。
財務報告よりも経営の質
財務報告の美化よりも、企業としての実質的な強さと市場での競争力を重視します。
長期投資への信念
投資家に対しても、短期的な収益よりも長期的な価値の創出に焦点を当てることを推奨しています。
結論として、長期的な成功と持続可能な企業価値の構築は、短期的な利益の追求を超えた深い洞察と戦略的な行動から生まれると言えます。企業は、一喜一憂する市場の反応や短期的な株価の変動に惑わされず、長期的な目標に沿って一貫した行動をとるべきです。
今回の記事は以下の書籍を参考にしています。